探偵版狐と狸
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昔から狐も狸も物語上、動物のくせに人を騙したり死んだふりをしたりとか何かにつけて姑息な動物の代表選手として不当に扱われ、可哀想な身の上にあるようです。
そういう我が探偵も狐狸に似た境遇にあるのかもしれません。
探偵の仕事には当たりと外れがあります。当たりというのはご存知のように良い結果が早く達成される場合のことで、外れとはその逆のことです。当たりの時はご依頼主に大威張りとまではいきませんが、それこそざっとこんなもの風、自信満々の報告をします。問題は外れの時です。何もわざと意図的に外そうとする探偵はいないと思いますが、状況的にどうしても外れは出てくるものです。探偵にもそれなりの意地も誇りもありますので、外れの案件でもなんとかしたいと思うのが性分なのです。1ケ月前のこと、どうしても浮気の証拠が欲しいが相手が非常に敏感で今までチャンスはいくらでもあるのにどうしても上手くいかない、なんとかしていただけないでしょうか。こんな案件が舞い込んできました。試しに探偵は早速、通常の方法で調査してみましたが案の定、対象者の警戒が厳しく途中で捲かれ上手くいきません。
今回はまともな調査方法ではいつまで経っても成功しないみたいです。ということで探偵は一般的な調査方法を諦め狸寝入りというか相手を油断させるという手法に出ました。まずは第一段階として調査対象者に気付かれるように意図的に調査を行いました。ちなみに当たり前の話ではありますが普通は気付かれないように調査を行うものです。次に第二段階はその継続作業、いつも途中で気付かれ見失ってしまいます。探偵にとって気付かれた上に見失うということは一番恥ずかしく格好がつかないことですが、ここが肝心なところです。また無理に追いかけたりはしません。つまり、探偵はこの程度のものと対象者に思い込ませるのが目的です。そして第三段階、いよいよ本番です。例のごとく意図的に気付かれる先発隊、今回は対象者の前に一組、おとりの先発隊の後ろに残る一組が配置されました。いつものごとく先発隊が予定通り途中で気付かれ調査を断念しますが、ここからが腕の見せどころです。
調査対象者はいつものように「カモがまた来たか」と捲いたつもりです。すっかり安心した対象者はその後すんなりホテルに入って行きました。狐狸性というか凝り性探偵は一仕事終えた後、大威張りでまた次の仕事に取りかかりました。